| キシリトールという言葉がここ数年であっという間に広がりました。歯の健康に役立つ食品として認められ、ガムやアメなどにもかなりの割合で配合ざれています。これは歯科から発信されて普及した数少ない物の一つです。しかし、なぜ良いのかが、もう一つしっかり把握されていない所があります。
このキシリトールとは何物なのでしょうか?キシリトールが食品添加物として用いられるようになってちょうど10年が経ちます。多くの先進国で1980年代から甘味料として使用されるようになりましたので、約20年遅れた事になります。
キシリトールは白樺や樫の木から採れる自然の甘味料です。甘さは砂糖と同等で、虫歯の原因にはならず、かえって予防する効果があります。溶ける時に熱を奪うため、清涼感のある甘味を持っています。カロリーは砂糖の75%と若干ダイエットには良いでしょう。ただ、腸管からの吸収が悪いため、一度にたくさん摂取すると下痢をする場合があるのでお気をつけ下さい。
虫歯がミュータンス菌による感染症であることは、歯科医療者のみならず一般の方々にも広く知られていると思います。虫歯のでき方を簡単に言いますと、ミュータンス菌が糖分を取り込んで酸を出します。その酸によって歯が少しづつ溶けていくのが虫歯です。虫歯の発生に必要なものは「ミュータンス菌」「糖分、特に砂糖」「ある程度の時間」で、これらの要素が重なった時に初めて虫歯が発生します。
キシリトールが虫歯を予防する理由は大きく2つあります
一つは甘さを持つため、口に入れると味覚が刺激されて唾液分泌を促進します。ガムの場合はさらに咬む事によりさらに促進します。唾液の中にはカルシウムなどの成分が入っているため、歯の再石灰化を促進しますので、初期の虫歯でしたら自然治癒する場合もあります。つまり人間は自分で自分の虫歯を治すの力を元々持ち合わせているということです。昔は今ほど砂糖がいたる所に氾濫しているような事はなかたので、虫歯はめずらしい病気だったのでしょう。
もう一つは、キシリトールも糖ですのでミュータンス菌に取り込まれるのですが、ミュータンス菌はキシリトールを分解してエネルギーにすることができません。それどころか代謝を阻害してエネルギーを消耗させることができます。ミュータンス菌はプラーク(歯垢)を形成して増えていきますが、キシリトールによってプラークの粘張度が低くなるため、ブラッシングなどで落としやすくなります。
以上のような理由で、キシリトールは虫歯予防に有効に作用します。
キシリトールQ&A
Q1 何歳からキシリトールをすすめたらよいですか?
歯がはえてキシリトール製品が使用できるようでしたら、可能な限り早い時期に始める事をおすすめします。なぜなら、歯がはえることは、ミュータンス菌の定着場所ができる事を意味します。特に、母親のミュータンスレベルが高いときには、母親だけでなく子供への応用も勧められます。また、歯の萌出前にキシリトールを使う事は、歯の健康にとって良い環境の中に歯が萌出してくる事になります。
Q2 1日のうちでいつ摂取するのですか?
プラークpHの低下を考えると、食後や間食後のキシリトール摂取がおすすめです。これはキシリトール摂取により、プラークpHを脱灰の危険がある臨界pH以下にしない効果があるからです。ただし、キシリトール使用によりプラークの性質が、う蝕原生の低いものに変わる事も明らかになっていますので、歯を長時間磨けない時や、食事前もおすすめです。就寝前のキシリトール摂取も良い方法だと思います。
Q3 ガム、タブレット、キシリトール配合歯磨剤のうち、どれが効果的ですか?
長期的な臨床研究では、ガム、タブレット、キシリトール配合歯磨剤すべてに効果が認められています。ガムは咀嚼による唾液分泌も期待できますが、研究によると効果の差は大きくはないと出ています。いずれにせよ、効果的に使用するためには、適当な時期に長期間用いることが必要になりますので、自分で応用しやすいものを、長期的に用いるのが良いと思います。
Q4 市販されているガムと歯科医院で売られているガムの違いは?
歯科医院で販売されているキシリトールガムには2種類あります。成分やガムベースが市販品と異なる歯科専用と、市販品と同じガムで包装を変えた歯科医院向けの製品です。歯科専用は、市販品に比較して1粒あたりのガムの大きさが約2倍になっていて、キシリトール量も約2倍になっているもの、ガムベースを硬くして歯や修復物、義歯に付着しにくくしているもの、歯質の再石灰化促進物質が多く含まれているものなどがあります。歯科専用も歯科医院向けも、パッケージを市販品よりも大きくし、1パッケージ当たりのガム数を多くしているものがほとんどです。そのため製造・流通コストが抑えられ、ガム1粒あたりの単価が市販品より安いのが特長です。
一方、市販されているキシリトールガムは、日本全国どこでも販売されていいるため、いつ、どこでも購入できる利点があります。製品の種類も豊富で、味やパッケージの種類が多いため、消費者の嗜好に合う製品を探しやすいのも特徴です。ただし市販品は、ガム1粒当たりに含まれているキシリトールの含有量や割合が歯科専用よりも少なく、包装もガム自体の大きさも小さいものが多いようです。そのため価格は安いのですが、ガムに含まれているキシリトールの量やガム1粒あたりの単価からすると、歯科用よりも高くなります。
Q5 キシリトールを摂取していれば、虫歯にならないのですか?
生まれてから死ぬまで全ての食品の甘味料にキシリトールを使っていれば、理論上、虫歯は発生しないと考えられます。全ての食品に入っている甘味料をキシリトールに換え、2年間続いた研究では、確かにキシリトールグループでは新たな虫歯の発症は見られませんでした。しかし、現実問題として、このように全ての食品の甘味料をキシリトールに換える事は不可能です。キシリトール摂取は、虫歯予防そして口腔保健行動の一部ですので、キシリトール摂取だけで虫歯にならないとは考えないで下さい。
Q6 フッ素とキシリトールはどちらが有効ですか?
フッ素は薬品で、キシリトールは食品である事をまず理解してください。効果のしくみが異なりますので、「どちらかを使う」という選択肢ではなく、両方を上手に使ってください。低濃度のフッ素を長期間使用すること、すなわちフッ素配合歯磨剤の使用は、歯を硬くし脱灰を防ぎます。ただし、フッ素の過剰摂取を避けたい人であれば、キシリトール摂取を積極的にすすめてください。なお、フッ素にはミュータンス菌の感染予防効果はありませんので、感染予防に用いるのであれば、キシリトールを用いてください。
Q7 1日何個のガムを噛めばよいのですか?
キシリトールをときどき、あるいは1日1回のように、少ない頻度で使用することは効果的ではありません。今まで行なわれている研究では、1日3〜5回ガムを噛む事により、虫歯予防効果が現れています。量的には1日10g程度ですので、市販の100%キシリトールガムでしたら1回2個を、歯科専用のものでキシリトール含有量が多いタイプであれば、1回1個を1日あたり3〜5回噛んでください。
Q8 虫歯のリスクによってキシリトールの摂取量に違いがありますか?
リスク別に摂取量を変えた研究報告は、わかりません。ただしキシリトールは、基本的に少量を長期に摂取する事により効果が現れますから、量よりも頻度が重要であると思います。摂取量は研究報告により1.5〜20gくらいまで幅がありますが、多くの研究では1日あたり10g程度ですので、リスクの高い人でも低い人でも摂取量は同じと考えて下さい。
虫歯予防先進国のフィンランドでは、このキシリトールの使用と予防健診や処置の徹底によって、虫歯が激減しています。聞くところによると、学校や幼稚園などの教室に、大きな缶に入ったキシリトールガムが常備されていて、給食などを食べたらすぐガムを噛む習慣ができているそうです。(ガムもかなり安価だそうですが)
歯磨きがや、子供の仕上げ磨きがなかなか徹底できない方は、ぜひこのキシリトールを摂る習慣を付けてみてはいかがでしょうか。何度も述べられていましたが、決して特効薬ではありませんので、1回摂ればよいというものではありません。フッ素も含めて習慣化することにより、効果を発揮します。
ガムを噛むだけで、虫歯予防になるのですから、皆様も今日から実行して見ませんか?私の医院はますます暇になるかもしれませんが・・・。もちろん定期検診とクリーニングには来てくださいね。
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