| なぜ歯科にはメンテナンスが必要なのでしょうか・・・?それは、永久にもつ治療(修復物)はないからです。当医院にも掲示していますが、ある統計を見てみると、平均すると10年もっている修復物はありません。もちろん平均ですので、もっと長持ちしているものもあれば、すぐに駄目になっているものも含まれるわけです。
つまり、結論を先に言うと、一旦手をつけた歯は、一生の間には何度か治療のやり直しが発生することをまず患者様に理解していただく事から治療が始まるということです。
どんなに高価な治療であっても、治療のやり直しが発生すれば、その歯は前回治療した時よりも傷みます。場合によってはその歯を救う事ができず、抜歯になる場合もあります。ですから、予防も含めて、まずその歯を治療する年齢をできるだけ遅らせる(一生治療しないのが理想ですが)、また、一旦治療したら、その時点から個人差はあるものの悪くなっていくという前提で、なるべく初期の段階でトラブルを発見し、対処するという事が大切です。
ある歯科セミナーで、講師の1人が車に例えておっしゃっていました。
「車を買って、全く乗らずに車庫の中に保管していれば100年でも200年でもそのままの状態を保つ事ができるでしょう。しかし、実際は機能させるわけですので、部品などの消耗もあるでしょうし、きちんと点検整備を定期的にやっているのと乗りっぱなしのとでは、当然その寿命に差が出るでしょう。また、気を付けていても不慮の事故に巻き込まれる場合もあるでしょう。ですから、形あるもの使う以上は一生もつというのは夢物語です。歯も全く同じ様に考えていただければ良いと思います・・・」
歯は、過酷な環境にさらされています
歯は皆様がイメージされている以上に、非常に苛酷な環境にさらされています。全ての臓器の中で、からだの中と外を貫いているのは、実は歯だけです。エッと思われる方もいらっしゃると思いますが、例えば胃や腸は口から肛門をつなぐ一本の管であり、胃の中や腸の中は体の外です。そこで消化吸収されて毛細血管などから吸収されたとき、初めて体の中に入ります。同じ様に肺も口から風船を体の中につないでいるようなもので、肺の中は体の外です。
ですから、歯周病などでいつも歯ぐきに炎症をおこしていると、細菌が容易に体の中に入り込みます。一過性のものならば、体の免疫作用でだいたい24時間以内に排除されると言われていますが、歯周病や虫歯などがひどくなると、常時細菌が進入していますので、それが全身にまわり、病気や過労、ストレスなどで体の免疫が落ち、それらを排除できなくなると重篤な疾患につながり、場合によっては命に係わる場合もあります。例えば、心臓の弁に菌が定着すると心内膜症を起こし、心臓発作の引き金になります。また、妊婦さんでは早産や低体重児につながります。その他、生活習慣病の悪化にも関与する事が最近判って来ました。
また、歯には再生能力がありません。体を作っている細胞のほとんどは、再生を繰り返して、常に新しい細胞に入れ替わっています。それに対して歯は再生能力が無いため、一度欠損が起ると、そこは人工的に補填してあげなければそのままか、病的欠損だと悪化していきます。
さらに、咬む力は自分の体重くらいと言いますので、食事のたびに何百回とそれらの力に耐えてるうえに、最近はストレス社会のせいか、寝ている時に歯ぎしりや食いしばりをする方が多く(自覚していない方が多いのですが、かなり高い割合でされています。)これは、食事の何倍、何十倍も歯に負担をかけます。その結果、歯の磨耗や破折などが起ってきます。
このように、私は歯が臓器の中で最も苛酷な環境におかれているのではないかと思っております。
環境が悪化するスピードを少しでも遅くするために
だから・・・といえば、少々言い訳がましくなりますが、口の中の環境は常に変化、それも残念ながら悪い方へ向かって変化していきますので、そのスピードを少しでも遅らせるためには定期的なメンテナンスがどうしても必要不可欠になってきます。
レントゲンで自覚症状はないのですが、たまたま疾患が見つかる事がよくあります。もちろん、その状況や治療方法、放置したらどうなるかなどは説明いたします。しかし、それでも主訴である歯のついでに治したりすると、「いらんことをした」とか「高くなった」などとおしかりを受ける事がありますので、ご本人の承諾がなければなくなく放置せざるを得ない場合もあります。
たしかに、私は常に歯にかかわっており、その大切さ(口の中だけでなく体全体に及ぼす影響)をわかっておりますので、歯の価値を非常に高く感じます。しかし、自分の歯に対する価値観は当然患者様ごとに全て違います。治療を中断する方は、歯の治療よりも優先するものがいくつもあるのでしょう。必要最低限の治療を希望される方もいれば、最高の治療を希望される方もいらっしゃいます。
ですから、私はたとえ治療を中断されてもそれは何か事情があったのだろうと思い、決し非難する事はありません。もちろん、治療した時よりも歯が傷んでいたりすると残念には思いますが、今ある状況を少しでも良くする様に全力であたります。
当医院では、治療終了まで来ていただいた患者様には必ず本日で治療が終了したこと、頑張って通院していただいた事に対するお礼とねぎらい、そしてメンテナンスのため次回の検診時期をお伝えいたします。また、こちらの方からはがきでのご案内もします。
しかし、途中で中断した方や、こちらが提示した治療計画の途中で未来院となった方にはそこまでは行なっておりませんので、結果的に口の中の状況が良い方は、それを維持していただくのに対してそうでない方は。何か自覚症状が出てから来ていただきますので、歯が傷んでいる事が多く、その差はどんどん開いていきます。
レントゲンなどである疾患が見つかった時、それが進行中なのか、停止しているのか、あるいは治っている途中なのかはその時点だけでは症状がなければわかりません。必ず時間の経過と共に見比べる必要があります。
たしかに治っている過程のものを治療すれば「いらんことをした」になりますので、それを見極めるためにも定期的なメンテナンスと検査が必要になります。
ぜひ、「痛くもないのにいらん事、余分な事をされた」とおっしゃらずに、年に1回、できれば半年に1回のメンテナンスを兼ねた定期検診をおすすめいたします。人間、生まれてから死ぬまで色々な欲がありますが、最後まで残るのは食欲です。歯が丈夫だと美味しいものをしっかりかんで食事を楽しむ事ができます。また、かみ合わせがしっかりしていると、痴呆になりにくいことも立証されています。先日、総入れ歯で食事にたいへんご不自由されていた方が、インプラントをしていただいて、現在は食事と旅行を楽しんでいると言う旨のはがきをいただいて、大変嬉しい思いをいたしました。
治療を通じて皆様にこのように実感していただくのが夢です。そのためにはくどいですが、ぜひ定期健診とメンテナンスをお願いいたします。
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