|
我々人間を含めて、地球上にある全ての物に対して重力というものが働いています。子どもでも知っている当たり前の事ではないかという声が聞こえてきそうです。日頃、その力を意識する事はほとんどありません。山に登ったり階段を登ったりする時に私など、体重の増加と筋力の衰えを感じるくらいです。
人間と同じ寸法で人形を作って床に立てようとしても、至難の業です。皆様もご経験あるのではないでしょうか。足の裏の接地面積が小さすぎます。では、人間はなぜ特に意識する事も無く立っていられるのでしょうか。それは、常に体の平衡を感じる器官によって調節されているからです。
従来、平衡をつかさどる器官は、耳の三半規管だと言われてきました。その構造や働きは、ここでは割愛しますので、知りたい方はインターネットや本等でお調べください。ところが、最近の研究で(前から気付いている方もいらっしゃったかもしれません)下顎もそれに関与していることがわかってきました。
試しに、目をつぶって立ってみて下さい。それだけでふらつく方は、薄目を開けていただいてもかまいません。体全体をリラックスさせて、下のあごを前後、左右に動かしてみて下さい。どうでしょう。姿勢が変化するのがわかるのではないでしょうか。下顎は、両端に関節(顎関節)があり、そこの靭帯などで頭の骨にぶら下がっている構造をしています。そのため、ある範囲の中では自由に動かすことができます。逆にいうと、簡単にずれる事もあるということです。
とあるオリンピックの体操選手が試合前に1本歯を治療したため、宙返りがうまくできなくなったという実話があります。彼らは極限までのバランス感覚や平衡感覚を駆使して演技をおこないますので、歯の治療によって微妙(ほんの数ミクロンくらいかもしれません)にあごのずれが生じたことによってそうなったと推察されます。
目まいがひどく、吐き気などを伴い、立つ事ができなくなる事もあるメニエール病というものがあります。普通は耳鼻科に行かれる事が多いのですが、上記のような事を考えると、かみ合わせのずれから起こる事もあることが理解できるのではないでしょうか。実際、歯科のかみ合わせ治療で治るケースも多くあります。
人間の真ん中を通っている背骨(脊柱)は、皆様もご存知だと思いますが、決して1本の硬い骨ではありません。小さい積み木を積み上げたような構造をしており、それぞれのすき間には軟骨のクッションが入っています。これが飛び出して悪さをするのがヘルニアです。
ではその積み木が崩れないのはなぜかというと、その一つ一つに筋肉や腱が着いていて、色々な方向に引っ張って安定させているからです。丁度、テントを張るときに、支柱をロープで引っ張って地面に固定するようなものです。当然、全ての方向に均等に力がかかっている時が、一番小さい力で安定させる事ができます。ゆがんでいると、力の不均衡が起り、ねじれが出てきます。
では、人間の姿勢がゆがんでいると、どのような事が起るでしょうか?だんだん想像がついてきたのではないでしょうか。そのあたりをまた次回、書いて行きたいと思います。健康になるためのキーワードは「重力」です。
健康になるためのキーワードは「重力」
頭の重さはボーリングの球とほぼ同じくらいの重さ(約4キロ)があります。これが首の骨の上に乗っているわけです。試しに4キロの球を棒にさして持ち上げてみればわかります。ちょうど棒の真上にあるときは、バランスがとれていてさほど重さを感じませんが、ちょっとでもずれると手元にずしっと重さがかかってきてその態勢を維持するためにはかなりの力を要します。
人体も同じ様に考えるとわかりやすいと思います。頭が脊柱の上にバランスよく乗っている時は、それを最小限の力で維持する事ができますが。どちらかに傾くと、それを支えるために、その力と拮抗する筋肉が緊張する事になります。筋肉は働くとその中に乳酸などの物質が蓄積されます。これは、時間と共に処理されてなくなるのですが、筋肉が常に緊張を強いられると、溜まりっぱなしになり、それがこりや痛み、腫れの原因となります。マッサージなどは、それを強制的に排出させる働きがありますので、そのときは良くなるのですが、原因が解決していないと症状は繰り返されます。
マッサージなどは日頃やらない運動をした後の筋肉痛などには良いと思いますが、姿勢などから来る凝りは毎日の事であり、原因を解決しないと定期的に通い続けなければならず、なおかつ完治は難しいということになります。もちろんやった後は体が軽くなると思いますので、即効性がある治療だとは思います。
「なくて七癖」という言葉がありますが、どうでしょう。例えば、ほおづえをつく手は毎回おなじではないでしょうか。横を向いて寝る方は、枕の位置がいつも同じではないでしょうか。足を組む時、上に来る足はいつも同じではないでしょうか。物を食べるとき、いつも同じ側で食べてはいないでしょうか。テレビはいつも座る位置のどちら側にあるでしょうか。一定ではないでしょうか。などなど、ちょっとした生活習慣の中でもかみ合わせ(顎)のずれは起ります。
人間の体は、何か不都合があると残りの機能でなんとかそれを補おうとします。頭の位置がずれると、そのままでは体が倒れてしまいますのでそれを支えようと首がずれる、それを補おうと肩がずれる、さらにそれを補おうと腰がずれる、同じ様に膝、足がずれるという風に、結局体全体がゆがんでしまいます。いつもどこかの筋肉が過緊張を起こしており、それに伴う不快症状を抱え続けるという状態に陥ります。
私は構造医学というものも勉強しているのですが、その中でも顎(下顎)の大切さに触れられています。人間の祖先は重力に拮抗して立ち上がりました。チンパンジーと人間の遺伝子は、97%くらいが同じだそうです。ではその差は何かというと、直立2足歩行をするかどうかだけだと言っても言い過ぎではないようです。
私が住む熊本の阿蘇に猿回し劇場があります。そこの話を聞くと、まず教える事は2足歩行であり、それができるようになると急速に芸の覚えが良くなるそうです。人間も立ち上がった時から脳の発達が急速に進んだと考えられます。つまり、2歩足で立つということは、人間を人間たらしめていると言っても言い過ぎではないようです。重力に対して最小の力で立つ事により、その他の事に力を注ぐ事ができるわけです。
|